今晩の記事は長文です・・・。
お忙しい方は時間のある時にお読み下さい(^^)
さて、今晩聴きに行ってきた、
チョン・キョンファのヴァイオリンリサイタル。
(6月8日、愛知県芸術劇場)
曲目はモーツァルトのホ短調ソナタ、ブラームスの第1ソナタ
休憩をはさんで、バッハのシャコンヌ、フランクのソナタ
アンコールはシューベルトのソナチネの第2、3楽章という、
かなり重量級の内容。
僕はチョンの生演奏は今回が初体験なのですが、
日本でのソロリサイタルは実に15年ぶり(!)とのこと。
僕が大学時代に猛烈にファンになって、
一生の間に絶対生で聴くぞ!と誓っていたコンサートだっただけに、
僕にとっては10年越しの夢が叶う瞬間でした。
予想とは異なる形ではありましたが、
深い感動と驚き、大満足のコンサートでした。
まず1曲目。
これまでのレパートリーと演奏の特徴から、
チョン・キョンファがモーツァルト?と違和感を感じていましたが、
65歳を迎えるチョンが奏でるモーツァルトは、
特に短調のソナタということもあってか、
静かな哀しみと達観を感じさせる表現で、
特別な工夫(目立つパフォーマンス)は一切ないのに、
一音一音にものすごいエネルギーと集中力とセンスが感じられて、
開始1分程で、すでに目頭が熱くなってしまいました。
これぞ超一流の演奏!
10分ほどの小品なのに、すでにブラボーが飛んでいました。
また、ピアニストのケヴィン・ケナーは、僕は初めてでしたが、
素晴らしい伴奏を聞かせてくれました。
チョンとの差が出すぎやしないか?と勝手に心配していましたが、
互角に、しかもピッタリと、チョンと共に音楽を作っていて、
いやいや、ぜひソロも聴いてみたくなるほどでした。
2曲目のブラームス。
特に第1楽章が優しくも厳しく、
ちょっとしたフレーズにも神経が張り巡らされているようで、
しかも自然、といった感じの演奏で、
美しい曲だけが感じられる、究極の演奏でした。
3曲目のバッハ。
アップテンポで一気に弾ききる様は爽快でしたが、
ちょっとした間、休符にも大きな意味と存在感があることに
気づかされる内容でした。
無伴奏なだけに、より自由奔放で、チョンらしさが現れているように感じました。
そして、最後のフランク。
チケットを買う際に、この曲が入っていることで、
僕は踊りだしたくなるほど大喜びしたものです。
それくらい大好きな曲なので、この曲がメインとして最後に配置されていることにも
大いに感動しました。
演奏もこの曲が白眉だったのではないでしょうか?
終始テンポは速めで、歌心に溢れ、しかし歌には溺れず・・・
厳しい音と、あふれ出すような情感が全曲を支配し、
激しい第2楽章や対位法を駆使した第4楽章においても、
最後の長調で終わる「希望」に全てが向かうように演奏されていて、
今回のカムバックコンサートのテーマでもあるように感じました。
アンコールのシューベルトは、
1曲目のモーツァルトと対をなすような印象で、
特に第2楽章はシューベルト独特の孤独の表現がとても印象的でした。
全体的に重厚感のある深い曲目が多かった中、
最後のシューベルトの第3楽章は、
ようやく陽気な音楽が聴ける喜びを感じさせてくれて、
デザートにケーキが出てきた時のような幸せな気持ちになりました。
軽めの曲ではありましたが・・・
しかし、演奏は極深(・・・こんな言い方ってあるのでしょうか?)。
スタンディング・オベーション(クラシックでは相当珍しい)が起こるほどの
超名演奏だったと思います。
最初に予想とは異なる形、と書きましたが、
それは若い頃のCDの印象とは随分異なる、ということでした。
もちろん、彼女独特の歌いまわしや音色は健在だったのですが、
若い頃の激しさや没入感とは全く異なる形で、
「充実」「達観」「一見普通」「深遠」
という言葉が思い浮かぶような、
そんなコンサートだったのです。
それにしても、こんなに一音一音聞き漏らせない演奏も珍しいと思いました。
しばらく他のヴァイオリニストは聴けなくなる、という副作用もある演奏です(^^)。
また、今回特筆すべきは、聴衆の質でした。
2000人入るコンサートホールでしたが、
皆さん、チョン・キョンファを聴きにきた!という人ばかりの様子で、
演奏中の咳払いもほとんど起こらず、
拍手の音も普段の2、3倍に聴こえて、かつとても温かさを感じるものでした。
これまで体験したコンサートの中で、間違いなく最高の聴衆だったと思います。
15年ぶりのチョンを首を長くして待っていたファンなのでしょうね。
僕もその仲間に入れたことを本当に幸せに思いました。
これからレコーディングも再開するとのこと。
ますますチョン・キョンファから目が離せなくなりました(^^)/